一人ひとりにはドラマがある 「路上生活者への目線を変えてほしい」

デンジャラス赤鬼のなきまさんと舌癌で亡くなったおじちゃん
なきまさんと舌癌で亡くなったおじいちゃん

MEGWIN:人助け活動をしているなかで心掛けていることってありますか?

パッペー君:最初はハンバーガーから始まって、いろいろなお弁当を作ってお届けしているんですけども、それがいま僕たちにできる人助け活動っていうスタンスでやらせてもらっているんです。

そのなかで本当に困っている方たちや路上生活者の方たちと出会っているわけですけども、お弁当を配りながらもうひとつやれている活動があるんですよ。

それが、お話をすることなんです。困っている一人ひとりと必ずお話をするということで、お話を添えてお弁当を配っているんです。

そのなかで、「僕、本当は働きたいんだ」とか「こういう病気持っているんだ」とかそういった言葉を聞いたときに、できるだけ対応させてもらえるようにしていくうちに、就職支援とかが少しずつですができるようになって。

“それぞれができることすべてが人助け活動”っていうスタンスで活動させてもらっていて、その活動の幅が徐々に広がっている状態ですね。

MEGWIN:なるほどねー。

パッペー君:なきまが一人ひとりの方とお話することが本当に得意なんで、毎回行くたびに心を開いてくれるんです。

最初はもちろん全然お話ししてくれないんですけど、2回目、3回目、4回目とお届けに行くと少しずつ心の扉が開いていって、最後にはすべての悩みを吐き出してくれて、なきまを本当に頼ってくれるんですよ。

それぞれの方にいろんなドラマがあって、末期癌の方もいらっしゃいましたし、難病も抱えながらも「本当は働きたいんです」っていう方もいるので、最終的には自立できる人には自立させてあげたいっていう想いがあるんです。そこまでいま、できているのかなっていう。

なきま:そういったいろんな悩みを抱えた人がいて、その分会話があるので、一人ひとりの悩みに向き合っていきたいなというふうに思いますね。

MEGWIN:そういうところまでも民間でやっちゃおうっていうのはすごいっすね。声かけないとできないことっていっぱいあるし、心を開くっていうところは役所とかやってないですよね。

パッペー君:見て見ぬふりがやっぱり多いですからね。人手不足も確実にあると思うので、いまは役所の方からも頼りにされているぐらい。

MEGWIN:こういう動きがあるっていうのは、YouTubeが起こした新しい形なのかもしれない。ほかにもこういう活動している人っていっぱいいるんでしょうけど、僕らの目に届かないですもんね。

メディアを通してやってくれて、ある程度再生数があるから支援したくなるし、すごくいい循環ですよね。1番印象に残った出来事とか出会いってありますか。

なきま:末期癌のおじいちゃんがいたんですけど、その方との出会いが1番印象的で。1年半ぐらいお弁当を配り続けていると、顔なじみの方とか毎回いる方ってやっぱりいるんですよ。

そのなかのひとりの方が、「最近喉が痛いんだよね」って言い出して。最初の方は、「風邪かもしれないし、薬も飲んでいるから大丈夫だよ」っていうふうに言っていたんですけど、全然治らないんですよ。

最終的に食事もおかゆにしてくれって言われて、その方だけおかゆ持って行っていた時期もあったんですけど、さすがにおかしいんじゃないかって、病院に一緒に行ったんです。そしたら舌癌で、ステージ3から4のほぼ末期です、今年いっぱいかもしれませんって。

そこから生活保護申請して、病院に通院して。最初は手術して治そうって話だったんですけど、お医者さんに聞いたら「手術する体力がないから、もうほぼ無理だよ」って言われて。

結局緩和ケアで痛みを取って最期を迎えることになったんですけど、その方の通院とか介護みたいなこととか、本当に家族みたいな感じで最期の瞬間を体験させてもらった機会がありまして、それはすごい印象に残っていますね。

MEGWIN:すごい経験していますね。そのおじいちゃんの治療費とか入院費とかっていうのはどうやって負担したんですか?

なきま:それが最初に生活保護を申請した理由でもあって。生活保護を申請すると医療券っていうのがもらえて、基本的に病気が重かったりすると治療費が行政から出るんですよ。

僕たちがおじいちゃんと1番最初に行って、舌癌と診断された病院はもちろん保険証持っていないんで、僕たちで負担して。そこからは生活保護が受理されたので、生活保護から出していました。

でも結局お金持ちではないので、送り迎えのタクシー代とか身の回りのものとか、生活保護だけじゃ賄えないものは僕たちで負担したりしていました。

MEGWIN:僕もマンガで読んだ知識ぐらいしかないからなー。医療券がもらえるとか、生活保護受けるの大変なんだなとか、マンガでしか知らなかったな。

なきま:ほんとマンガみたいな世界ですよ。

パッペー君:生活保護を受ける感覚って、路上生活者のほとんどの方が持っていないんですよ。税金で賄われているっていうのもありますし、申し訳ないっていう気持ちがあるみたいで。

「もし困っているんでしたら一緒に生活保護を申請しにいきますよ」って言っても、拒否される方が多いんです。それでも路上生活するっていう方は、年金で家賃を捻出する余裕はないけど、食事は年金で賄えるっていう方たちなんです。

MEGWIN:年金はちゃんと渡されているんですね。

パッペー君:路上生活をされている方々って皆さん謙虚なんです。最初は「食べ物ばかりあげやがって」ってよく言われましたけど。一人ひとりをズームアップするとね、よい方が多いんです。

こーたん:あまり物乞いしないし、「必要なものありますか」って聞いても「いや、大丈夫です」みたいな方がほとんどです。

MEGWIN:究極何もいらなくなるんですかね。

なきま:荷物を持ちたくない人が多いですね。ずっと1か所にいれるわけじゃなく、清掃の時間とか離れなくちゃいけない時間があるので、みんな何かしらの理由で移動しなきゃいけないんですね。

だから何か渡そうとすると「荷物増えるからいらない」って言う方もいますし、だからこそダンボールで寝ているんですよね。捨てたり、すぐに移動できるから。

MEGWIN:そんな生活に困っている人に向けて、気軽にできることってありますか?お金がないけど何かしてあげたい、でも何をしたらいいかわからない人って多分いっぱいいるんじゃないかなと思って。

パッペー君:それは結構質問きますね。1番簡単なのはやっぱ話しかける。

MEGWIN:簡単じゃないですよ。

パッペー君:アイコンタクトでも、会釈でも。毎日通る道でしたら、アイコンタクトとか会釈とかしている間に慣れてくると、言葉をかけやすくなると思うんです。

目を合わせるにも見下すような見方だと、敵対関係持っちゃうから最初が大切で。最初に白い目で見ちゃうとやっぱり警戒されるので、ちょっと柔らかい目つきで、笑顔気味で見ると全然違いますね。

なきま:目線だけでも変えてほしいなって。昔テレビとかで見た話だったと思うんですけど、ホームレスの人を通行人が見るときの脳の反応っていうのが、ゴミを見ているのと同じ反応らしいんですよ。

そんな目線で見ているぐらいだから、路上生活者の人たちにとっては不快というか、見下されているんだなっていう感じがするじゃないですか。

彼らは寝たり、座ったりしているんで、通行人の人たちは必然的に彼らのことを上から見るわけじゃないですか。上から見られるって物理的にも圧迫感があると思うので。

声をかけたり、ジュースを買ってあげたりはできないとしても、見下すような視線じゃなくて、「それぞれ事情があるんだな」っていう優しい気持ちで歩いてもらいたいですね。

MEGWIN:カッコイイこと言うなー。僕なんかまだその話しかけるのは絶対難しいと思うんですけど、会釈ぐらいで路上生活者の方も変わってくれるんですね。

なまき:まったく違うと思うんです。最初話しかけたときは不愛想なんですけど、5分とか話しているとニコニコ話してくれたりするんですよね。今までこの社会から受けてきた目線によって、向こうも凝り固まっちゃっている部分はあるので、こちらから歩み寄っていかなきゃいけないですよね。

別に何かしなきゃいけないわけじゃないですけど、視線とか目があったときに会釈するとかお互い気分いいじゃないですか。

MEGWIN:ほんといいこと言うよなー。自分も生活に困る可能性は少なからずあるから、そうなったときのためにもいまできることをしておきたいっていうのも本心ではあるんですけど。

なきま:MEGWINさんがそうなったら、うちに泊めます(笑)。

MEGWIN:僕はそうなったときは生活保護をちゃんと受けようと思っています(笑)。

「子どもの笑顔が好き」‐パッペー君の想いが子ども食堂立ち上げに

渋谷クロスFM「ミミラジ」に出演いただいた際のデンジャラス赤鬼のなきまさんとパッペー君
渋谷クロスFM「ミミラジ」に出演いただいた際のなきまさん(左)とパッペー君

MEGWIN:子ども食堂を作ろうとしているとのことなんですが、きっかけは何ですか?

パッペー君:僕自身、子供が好きで。イベントの仕事をやっていたときも、子どもたちの笑顔で1日頑張れたりとか、子どもの笑顔が好きなんです。

もっといろんな人助け活動をやりたいって言ったなかのひとつに、「子ども食堂を僕たちの地元に作りたい」っていうのがあって。

大勢の生活困窮者の家庭があったり、シングルマザーの家庭があったり、引きこもりで学校に行けなかったりとか、いろんな問題が家庭にあるっていうのを聞いていたんですよ。

子ども食堂っていうのをやると、そういった子たちが来てくれたり、悩みを打ち明けてくれるよっていうことをテレビとかで見たりしていたんで、1回やってみたいなって思って。

本当に何の知識もなかったんですけど、「やる」ってみんなに口で発したら、なんかもうやんなきゃいけないじゃないですか(笑)。自分で自分を追い込むじゃないですけど、覚悟を決めるような感じで子ども食堂をやろうっていう気持ちが強くなったんですね。

週2回以上、80食とかお弁当を作っていると、たくさんのお弁当とか食事を作る技術がマスターされているんで、そういった心配はもうないんです。これだったら子ども食堂もできるなっていう、本当に自信持って思えるので、それで動き出した感じですね。

MEGWIN:最近親ガチャみたいなことが話題になっていますし、いろんな問題がありますよね。とりあえずやるっていうのは必要ですね。

パッペー君:僕自身も小学四年生で母子家庭になったんです。そういった子どもたちの寂しさとかもある程度共感できる境遇で育ったので。

僕が子どものときにいろんな人から手を差し伸べられたら、もっといい人間に育ってたかなって思うんです。

MEGWIN:いやいや。やりたいことがいっぱいあるって言っていましたけど、本当にいっぱいありますね。ひと増やさないとね。

パッペー君:ひとを幸せにするような活動をしていると、自分たちがすごい幸せになっていて、気付いたら今、僕たちの前には温かいひとしかいないっていうような。

そのなかには無償でお手伝いしますよっていう方々が大勢いらっしゃるので、ひとが足りないっていうのは全然不安がないですね。一声かけたらみんな来てくれるようなひとたちがもう周りに揃っているっていう、知らない間に(笑)。

MEGWIN:まさに人徳じゃないですか。

パッペー君:本当、そうですね。

MEGWIN:YouTubeを通して伝えたいこと、今後チャレンジしたいことを教えてください。

なきま:僕たちがやっていることは、ホームレスの方の現状とか状況を伝えるっていうのももちろんなんですけど、見てもらっている方に元気になってもらえたり、優しい気持ちになってもらえるような動画づくりを心掛けているんです。

「明日から頑張ろうかな」って思ってもらえるように、僕たちの想いとか、路上生活している方のストーリーとかに着目してやっているんですね。

路上生活されている方のなかには障害を抱えている方もいますし、鬱とか病気とかで元気じゃない方とかもいるんです。動画を見てくれている方のなかにも障害を抱えている方もいれば、仕事がない方もいるし、家庭が複雑な方もいるとなると、重なる部分って意外と多いと思うんです。

なので、視聴者の方には「まだ諦めちゃ駄目なんだよ」っていうところや、「助け合いって大事なんだよ」っていうところを伝えていきたいですね。

パッペー君:生きるっていうことの本当の根本的な部分を、もっと皆さんと共有できていけたらなと思いますね。

なきま:今後の目標に関しては、人助けのYouTubeチャンネルってあんまりないじゃないですか。そのなかで、チャンネル登録者数100万人っていうのは一つ目指すところ。

あとは実際の支援の方ですね。いまは子ども食堂をつくっているわけですけども、いずれは単にお弁当を配るだけじゃなくて、路上生活者の方々への支援ももっと具体的なものをやっていけたらいいかな、と思っています。

MEGWIN:だいぶ変わったな、最初の印象と(笑)。YouTubeパッと見るだけだとヤバイ奴に感じるけど。本当に100万人いったらいいですよね。こういう支援をしたい人たちが100万人いるってことがほかのチャンネルと違うなと思う。

なきま:あとはMEGWINさんとコラボすることも目標です(笑)。

23歳のなきまさんとこーたんの活動を、どんなときもお兄さん的な目線でサポートするパッペー君。今回のインタビューでは、そんなチームワークの良さが感じられた。

デンジャラス赤鬼がオープンに向け準備を進めている子ども食堂は、2021年11月末日までクラウドファンディングサイト・キャンプファイヤーで資金を募っている。2022年1月16日、19日、20日にはプレオープンが予定されており、着々と準備は進んでいるようだ。

彼らの人助け活動にゴールというものはなさそうだが、一体どこまでこの活動の輪が広がっていくのか……。彼らのYouTubeやこのインタビュー記事を通して、多くの方が生活に困っている方々への理解を深めるきっかけになることを願いたい。

デンジャラス赤鬼のYouTubeはこちら:デンジャラス赤鬼
取材・文:らいばーずワールド編集部

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