藤井隆とYOUが大暴れの“サイコバラエティ” 「土ダメ」で奇跡! 棟方志功の版画発見、オーナーはスリランカ人!?

全国で人気のタレントを多数輩出し、またローカル番組らしい味わいがクセになる、関西制作のテレビ番組に注目する連載「関西バラエティ番組事件簿」。

今回取り上げるのは読売テレビの『発見!仰天!!プレミアもん!!!土曜はダメよ!』(毎週土曜日放送)だ。

「土ダメ」の略称でおなじみの同番組は2003年9月にスタートした長寿バラエティで、司会を藤井隆、YOUがつとめ、桂小枝、フットボールアワー、横澤夏子、NMB48の白間美瑠、渋谷凪咲、梅山恋和らが現在レギュラーとして出演している。

この番組の持ち味は、あえて醸し出される「ぎこちない間」である。藤井隆やYOUのムチャ振りに対して、共演者が誰もうまく乗りこなせずに微妙な空気が流れたり、躓いたりしながら番組が進行していく。またふたりは唐突に芝居じみたノリになったりするのだが、特にオチをつけないまま次のコーナーへ移ることも多々。その独特かつ異様な進行は、「サイコバラエティ」と称されるほどである。

力んだテンションでブレイクの予感、西川きよしの息子・忠志

7月17日のオンエアでも、藤井隆がオープニングで「私は焼かない! 藤井UVカット隆です」と何の伏線もない自己紹介で登場。ゲスト出演のプラン9・お~い!久馬についても、ユニット名ではなく「吉本総合芸能学院・講師」と紹介し、久馬が「そういう肩書きで出演なんや……」と苦笑い。肩書きの紹介であってもタダではすませないところが、まさに藤井スタイル。そのあたりは彼のかつての代表番組『Matthew’s Best Hit TV』(テレビ朝日系)を彷彿とさせたりもする。

続いて久馬が「期待の若手」と推薦するコンビ、テキサスマウンテンローレルが登場してコントを披露。だがここでも藤井は「はい、では久馬さん、解説を」と感想もなく、まさかの全振り。ネタの意味を久馬があらためて説明するなど、番組開始5分も立たないうちにカオスが勃発しまくった。

父・西川きよしばりの力んだテンションが関西でウケ始めている吉本新喜劇・西川忠志のコーナー「サクッとOKAMI~小料理屋で人生勉強してみない?~」もすさまじかった。西川は、ロケ先の小料理屋に入店し、鳥かごを見つけて一通りそれについて触れた後、「僕はこれをクイズにしたい」と予定にないことを言いだす。ワイプには、「えっ、どういうこと?」と困惑するフットボールアワー後藤らの表情が……。

さらに西川の快進撃は止まらず、一般的には喋らないとされるコキンチョウに「こんにちは、こんにちは」とひたすら話しかけ、女将の着物に蝶の模様が描かれているのを見つけると「蝶を見たら歌いたくなる。蝶々~、蝶々~」と歌い出すなど、戦慄を覚える展開に。普通の全国番組であれば事故扱いの内容を、休日の夕方に堂々と見せる。これが「土ダメ」である。

7月14日、乃木坂46の早川聖来(大阪出身)がラジオ番組『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に出演した際「よく観ていた関西ローカル番組」として、『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)、『よ~いドン!』(関西テレビ)とともに「土ダメ」も並べ、「毎週欠かさず観ていた」と振り返った。お気に入りのコーナーに「ギョーテン!住宅情報!!小枝不動産」を挙げるとTwitterでトレンドに入り、「小枝不動産がトレンド入りって、そんなことある!?」「東京でも放送してほしい」などのコメントが続出。

「小枝不動産」は、落語家・桂小枝が不動産屋の案内のもと、関西各地に存在する特徴的な豪邸やクセの強い住宅をめぐる物件紹介コーナーだ。同コーナーの人気の秘訣は、小枝の目の付けどころの良さである。7月24日の「もっと驚いてしまえる家」編では、大阪富田林市にある物件を訪問。小枝は家のなかで、不動産屋も気づかなかった棟方志功の版画を発見する。さらにこの物件のオーナーが「謎のスリランカ人」であることを聞き出し、「確かにそれだったら棟方志功の作品の価値の高さは知らないはず」と解釈してみせた。

小枝はこのように、物件の隅々にまで目を配って拾い上げ、話題を膨らませていく。自分自身が不可解に思った箇所は何度もつつく。そうやって「天丼」をすることで何気ない事象をおもしろくしていく。ただ、しつこさがありながら、話の切り上げは絶妙にあっさりしている。そこがまさに小枝の名人芸である。

NMB48・白間美瑠、番組での経験はどのように生かされる?

新型コロナの影響もあって、現在の「小枝不動産」のロケはなかなか大変そうではある。

オープニングの小枝と不動産屋の会話パートでは現在、一定の距離をとるなど配慮がなされている。紹介される物件も最近は豪邸や広めの住宅が多い。「小枝不動産」といえば、狭いスペースを有効活用していたり、強引な建てつけだったり、アイデアと無理やり感が同居する物件の紹介が大きな見せ場だった。しかし、物件内での密を避ける意味合いもあってか、ゆとりのある住宅の登場機会が増えてきてように感じる。

それでも「小枝不動産」は、毒舌なナレーションとワイプのなかのフットボールアワー・後藤の言い合いなど見どころが多いため、新型コロナで生じるそれらの違和感はほとんど引きずらない。

また「土ダメ」には、NMB48も結成当初からメンバーがレギュラー出演。

8月15日にグループを卒業する白間美瑠も、15年6月から出演し続けてきた。20年1月23日のオンエア回では、藤井から「夢のデートを体験してほしい」と無茶振りされ、モンスターエンジン・西森を相手に妄想デートを繰り広げるなど、「土ダメ」らしい試練を味わってきた。

グループ卒業後はアーティストとして活動予定の白間。この番組での経験がどのように生かされるのか、いろいろ期待したい。

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