ポケモンをはじめとした人気アニメ・マンガ作品に登場するキャラクターをアイシングクッキーで制作、その過程を収めた動画を公開しているのが、YouTube チャンネル「WHIP SUGAR(ホイップシュガー)」だ。
SNS で紹介されているアイシングクッキーは、どのキャラクターも原作に忠実でクオリティが高く、アニメ・マンガの権利元(以下公式)も反応するほどの腕前なのだ。
奥さまが作品を作り、旦那さまがカメラ・編集を担当するというスタイルで作り上げられる WHIP SUGARの動画は、如何にして注目を浴び、公式が情報を拡散するようになったのか……。
今回も当サイトではおなじみの YouTuber の先駆者 MEGWIN さんをインタビュアーに迎え、カメラ・編集を担当する旦那さま(以下 WHIP 旦那)に作品や動画制作について話をうかがった。
新型コロナウイルスの影響で「WHIP SUGAR」が誕生? “見せるプロ”への道のりとは
MEGWIN:まだ YouTube を始めて 1 年半くらいかと思いますが、きっかけって何ですか?
WHIP 旦那:バレンタインやクリスマスに妻がお菓子を作ってくれるというのはよくあったんです。そのなかで、娘の誕生日に「ディズニープリンセスのアイシングクッキーを作ってあげよう」って妻が作ったクッキーが、やたらクオリティが高かったんですね。
今まで作っていたものとは比べものにならないくらい、本格的なのを作っちゃったんで、もともと私が使っていた Twitter のアカウントにスマホで撮影した写真を載せたら、急に「5 万いいね」がついて。
旦那がカメラマンで、いつもおしゃれな写真を載せても「いいね」が500とか600しかつかなかったのに、スマホでてきとうに撮った妻のアイシングクッキーが「5 万いいね」ついちゃったら、それは不本意ですよね(笑)。でも、このコンテンツで Twitter や YouTube を運営したら伸びるんじゃないかと思って、すぐにYouTube 開設して。
MEGWIN: すぐやったんですね!
WHIP 旦那:それが 11 月末、ほぼ 12 月なので、そのあとすぐ新型コロナウイルスがきて、私の方の仕事が減り始めて。だったらもう私が仕事休んで、アイシングクッキーで仕事できる方向に持っていこうと、すぐ切り替えちゃいましたね。
MEGWIN:決断がすごい。
WHIP 旦那:MEGWIN さんもわかると思いますけど、周りにはやっぱり「YouTube でご飯食べられるのか」とか、「カメラの仕事じゃなくて、妻の仕事で食べていくなんて無理だよ」って最初の頃はいわれましたけど、関係ないですもんね。やれる人はやれるので。
MEGWIN:関係ないですよ。WHIP 旦那さんは、もともとカメラマンなんですか?
WHIP 旦那:フリーのカメラマンとドローンパイロットですね。
MEGWIN:ドローンパイロットもやってたの!?それは仕事減りそうですね。
WHIP 旦那:ブライダルの仕事も請け負っていたのですが、コロナでぱったり。
MEGWIN:大打撃だったんですね。でも、だからスムーズにいけたんですね。
WHIP 旦那: 動画の撮影もできたので。YouTube やろうと思っていなかったら、多分本当に迷ってましたね、どうなるか。
MEGWIN:奥さんはもともとお菓子作りとかやってたんですか?
WHIP 旦那:ド素人といえばド素人ですよね。本当に趣味で年に 2 回作るくらいだったので。お菓子作りは好きだったんですけど、パティシエでもなんでもないので。
MEGWIN:じゃあ、見よう見まねで?
WHIP 旦那:独学と YouTube で勉強したって妻がいってましたね。
MEGWIN:ヒットしている人はほとんど、YouTube で学んでるっていう。
WHIP 旦那:私もカメラ始めたとき、最初は YouTube が先生だったので。
MEGWIN:なるほどね。10 年、20 年前に「本で調べました」っていってるのと同じことですもんね。
WHIP旦那:職人のお仕事って、お菓子の場合はお弟子さんにつくとか、カメラマンは荷物持ちから始めるっていう感じだったのに、YouTube で技術をいただけるようになったっていうのは、「時代が変わったね」って、みんないってますね。
MEGWIN:特にこのジャンルだとやってる人が少ないから、すぐプロって名乗れちゃうようなジャンルではありますよね。
WHIP 旦那:お菓子に関しては、販売してる人だとプロでしょうけど、我々は一切販売はしていないので。見せるだけにはなってしまうんですけど、そのおかげで企業さまからご依頼なども入るようになって。
MEGWIN:“見せるプロ”にはなってますよね。
WHIP 旦那:いつまで素人っていっていいのかな、って思ってます(笑)。ポケモンの作品を作っているときは、ポケモンの関係者の方が毎回 Twitter で拡散してくださったり。「WHIP SUGAR さんの YouTube見てください。ぱやぱやー」みたいなことを書いてくれるんです。
MEGWIN:ここまですごいと、公式が寛大になりますよね。
WHIP 旦那:ほかの人よりは、ちゃんと原作のクオリティで、ルールも守っているので。崩したりしてないんで、ほとんど。最近は、『少年ジャンプ』とコラボして、公式の YouTube に載せてもらったり。「この人は公式 OK してる人なんだ」くらいに思われているので、やりやすくはなりましたね。
MEGWIN:僕なんか動画作って、だいたい怒られることしかないんですけど(笑)。褒められる時代になったんだなって。公式の人が宣伝してくれるってよいですよね。
次の作品のヒントは「次回予告」にあり! WHIP SUGAR が明かす SNS における“ヒットの方程式”
MEGWIN:作品制作についてなんですけど、どのように作るものを決めてるんですか?
WHIP 旦那:YouTube を始めた最初のころ、テレビアニメの『ポケットモンスター』の次回予告を見て、来週までにその次回予告に出てきたキャラクターを作るっていう形でやってたんです。日本で毎週 Twitter のトレンドのベスト 10 に入るのって多分ポケモンくらいなので、ポケモンを作っておけば話題になるっていう。
ポケモンは私が小学生のころからずーっとやっていて完全にファンだったのと、視聴者の方もポケモンのファンの方が多かったっていうこともあって、そこを追っかけてやってました。
MEGWIN:ヒットさせる方程式ってやっぱりあるんですね。
WHIP 旦那:Twitter で最初にバズってから、バズることだけ研究して。どのタイミングでこのトレンドがくるのか、ゲームの発売日がいつだから、何日前に公式が発表するだろうっていうところもチェックして。
もとの作品がトレンドにのった瞬間に WHIP SUGAR の作品が公開されるっていうのも、研究の成果です。ポケモン以外にも、『呪術廻戦』も当てられるようになってきました。
MEGWIN:次にくるものを分析して、なおかつアニメの次回予告から次に登場するまでの期間に作るんですね。アニメを追っかける人は、そこまで考えてやらないといけないんですね。
WHIP 旦那:ほかの人はやってなかったんですよね、次回予告からのはさすがに。絵師さんは、アニメでキャラクターが登場してから 30 分くらいで描けちゃう方もいるんですが、そういう人たちがトレンドの最初にのっていたのを跳び越えて、WHIP SUGAR が先にトレンドに出る。「仕事早っ」って言われます(笑)。
MEGWIN:「次回予告にのってましたから」って(笑)。最近の『ウマ娘』なんかもそういう感じで出してるんですか?
WHIP 旦那:『ウマ娘』は私が好きすぎて(笑)。先に作っておけば、最初は伸びなくてもまたしばらくしてバズることもあるんです。そのときに主要キャラだけでも作っておけば、2 回目出し、3 回目出しで何万「いいね」がつくことが多いので。
MEGWIN:その方程式で一番はまったものってなんですか?
WHIP 旦那:『呪術廻戦』は、YouTube で 60 万再生いけましたね。
MEGWIN:それは何で?次回予告からのやつ?
WHIP 旦那:最初にマンガで読んでたんですけど、アニメの次回予告で五条悟先生っていうキャラクターがクソかっこいい感じで出てきたんです。「これタイミング合わせれば 100%バズるね」っていってたら、いつも以上に伸びました。思っていた以上でしたね。
MEGWIN:勉強になるなー。どんな機材で撮ってるんですか?
WHIP 旦那:一眼レフで撮ってます。
MEGWIN:スマホかと思ってました。最初見たとき。
WHIP 旦那:スマホでもよかったんですけど、撮るならちょっとボケみとか活かしたくて。ただのメイキング動画じゃなくて、エンターテインメントでやりたいっていうのを決めていたので。
MEGWIN:ボケみはすごい効いてますもんね。
WHIP 旦那:私が外で仕事している間に妻が撮影しているんですが、妻はいってしまえばカメラに関しては素人なので、あとで映像見たら全部スローモーションで撮ってたとか、白とびしてるとか、頭 10 秒であとなんにも映ってないなんてこともあります。そんなデータをバレないように編集しています(笑)。
MEGWIN:1 つの作品をつくるのに、どれくらい時間かかってるんですか?
WHIP 旦那:最近は 30 時間ですね。
MEGWIN:30 時間!?けっこう時間かかるんだー。
WHIP 旦那:最初のころは 1 日、2 日でできてたんですけど、どんどん立体になっちゃうから、歯止めがきかなくなっちゃうんですよね。いまは 4 日で全部終わらせてます。クッキー作るので 3 日半、編集半日。
いつも撮影に 128GB のメモリーカードをだいたい 2 本半くらい使ってるんですけど、妻が金曜日の午前中に撮り終わって、そこから写真撮影して、Twitter に 18 時とかに出すんです。22 時に YouTube で公開なので、私その 128GB のメモリーカード 2 本半分を 3、4時間で編集してるんです(笑)。
MEGWIN:圧縮するのだけでもけっこうな時間かかっちゃいそうですね。
WHIP 旦那:前日の分とかはその日のうちにダウンロードしてますけど、けっこう切り貼りしてるんで。
MEGWIN:スケジュールけっこう詰まってますね。
WHIP 旦那:鬼スケジュールでやってます(笑)。夜も 21 時くらいから Twitter のスペースで工作関係の人たちとの対談をほぼ毎日やってるんで。
MEGWIN:クッキー食べられないじゃん!
WHIP 旦那:よく「食べるんですか」って聞かれるんですけど、最近は記事に載ったりすることが多いので、撮り足りてないと困っちゃうから残していて。あとは集合体で撮った方がかっこいいやつもあるので、3、4 作品たまったら撮る感じで。
その分、いくつか予備も準備しているので、失敗しているやつだったり、うまくいかなかったものを子供たちがおいしく食べてますね。
MEGWIN: 1 番時間がかかった作品ってどれですか?
WHIP 旦那:「ポケモンの日」っていうのが去年もあったときに、『カビゴンのかわいい観覧車』っていうのを作ったんですけど、それが 30 センチ越えの作品で。縦に 33 センチあって、横も 20 センチっていう大きさのものを 1 週間かけて作りましたね。絵も映像もすごくないので、今見て欲しくないな(笑)。
MEGWIN:こだわりますね、奥さん。途中で諦めた作品ってあります?
WHIP 旦那:いっぱいありますね。週に 1 本、2 本出すってやっているなかで、3 日間で終わらないから「これはナシ」っていうのをけっこうやっているので、ボツ作品けっこう多いです(笑)。クッキー焼いたのにボツとか。
MEGWIN:だいぶストイックですね。僕、全部出しますけどね(笑)。
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