新垣結衣と星野源が結婚を発表した。昭和世代からは“山口百恵と三浦友和の1980年以来の国民的スターのゴールイン”などと言われるが、その計算では、次の国民的スターの結婚は2060年。スターというのは、なんとも気の遠くなる時間軸から生まれるものなのである。
ともあれ、新垣と星野は多数のテレビCMに出演しており、20年時点でふたりあわせて10社以上と広告契約を結んでいる。彼らの結婚を、笑い歓迎する会社がある一方で、若干気まずい思いをすることになった会社もあるわけだ。そこでここでは、今回の結婚で笑い/泣きした会社をみてみよう。
まず、笑う会社とは、ふたりが出会ったTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』がバズった直後にスタートした「どん兵衛」シリーズの日清食品である。
『逃げ恥』内では、新垣結衣に「みくりさん」と声をかける生真面目な男役であった星野は、本CMでは吉岡里帆演じる、どん兵衛の化身を「どんぎつねさん」と呼び、『逃げ恥』をそっくりそのまま不器用な男を演じている。
ドラマ放送直後は「『逃げ恥』こすりすぎだろ!」と日本全国から突っ込みがとんでいた本CMも『逃げ恥』の放送から数年が経った今では、こちらがオリジナルだったようにさえ勘違いしてきた。
そういえば、星野は主演映画『箱入り息子の恋』でも、女優の夏帆相手に不器用な男を演じており、もはやこのような役どころは彼の真骨頂。
おめでとうございます🎉 pic.twitter.com/3gMgfe3E2z
— どん兵衛 公式 (@donbei_jp) May 20, 2021
結構報道直後に「どん兵衛」の公式ツイッターが「おめでとうございます」という文章とともに、星野の顔にデスクライトを吉岡が当てた取り調べを思わせる画像を投稿。これが無事バズり、SNSでの話題化を得意としてきた日清食品CMチームの勘どころの良さが伺える。もはや結婚もネタにできて、どんぎつねシリーズも今後さらに話題になRisouda。星野源×吉岡里帆×どん兵衛体制は、おそらくメタっぽい表現を取り入れながら続いていくだろう。
さて、「どん兵衛」について一旦の解決を見たところで、若干気まずい泣く会社が「十六茶」のアサヒ飲料である。こちらの主演は新垣。「ゆいは朝、十六茶から~♪」と松本伊代の持ち歌をカバーし、ミニスカートで踊っていたのは、はるか以前の09年のこと。
以来、十年以上に渡り担当している本CMは、今年大きくブランド刷新をおこなった。これまでの十六茶CMの演出を振り返ると、前述の「替え歌期」、「バスガイドに扮したゆるキャラ共演期」、「家族に語りかける妖精期」、「姉、姪っ子と遊ぶ期」と大まかに4つの演出にて表現をおこなってきた。
以前の替え歌やゆるキャラのような彼女の若さとかわいい表現でマスを取りに行く手法から、それ以降の家族表現はターゲットを30~40 代の女性層へと設定し直したダイレクトマーケティングな手法に変節している。ちなみに「姉、姪っ子と遊ぶ期」では、新垣と同じ事務所の浅見れいなが姉役として出演しており、新垣の出演と引き換えに、バーターでの交渉があったことは想像に難くない。
さて、21年に刷新した十六茶のなにが気まずいか。
本作において新垣は十六茶史上、初めて男性キャストと共演している。あらすじは次の通りだ。
トマト農園の娘役の彼女はある日、ひさびさに都会から帰省し、実家のトマト、美しい自然、そしてそこにマッチする十六茶の旨味に感動する。そして隣に住む同じく新規就農者役は、俳優の中村倫也が演じる。CM用に書き下ろされた久石譲の旋律が、まだ出会っていないふたりの恋を予感させる。
演出家には大物CMディレクター永井聡が起用され、これまでのダイレクトマーケティング的な手法から、「国民的ブレンド茶」といった方向性に大きくかじを切った。
そのために、大物キャスト×大物作曲家をツモったが、新垣と中村の恋は残念ながら出会う前に終幕である。
これまで新垣といえば、任天堂Switch、チキンラーメン(日清食品)など彼女がひとりで商品を扱う「おひとりさま表現」が目立ってきた。それがここにきて、十六茶にて珍しく恋愛路線にふった矢先の結婚発表――。
韓国では「初恋の人」という渾名で親しまれ、プラトニックなイメージで売ってきた新垣の結婚発表。気まずい思いをしているのは、アサヒ飲料と担当代理店の博報堂かもしれない。
コメントする