現在オンエア中の連続ドラマ『ネメシス』(日本テレビ系)が苦戦を強いられている。嵐の活動休止後、初のドラマ出演となった櫻井翔と、今をときめく人気女優・広瀬すずがW主演を務めるとあって、オンエア前から注目度の高かった本作。それが、初回こそ11.4%と2桁発進を遂げたが、以降は1桁台を推移。最終回前の第9話(6月6日放送)は7.9%となった(視聴率はビデオリサーチ調べ/関東地区)。
一部では映画化の噂もささやかれており、今期では断トツの注目度を誇っていた『ネメシス』が、なぜ低視聴率にあえいでいるのか? あるテレビ誌の記者は次のように分析する。
「最大の敗因は、櫻井くんの芝居でしょうね。彼の役柄はポンコツ探偵で、助手のアンナが推理したトリックを教えてもらいながら名探偵を気取る……という設定なのですが、このポンコツ探偵の芝居があまりにもコミカルすぎるというか、バラエティにおける櫻井くんそのものなんですよね。そもそも聡明なイメージの櫻井くんがポンコツ探偵を演じること自体にも無理があるし、彼のコメディ芝居は仰々しすぎて観てられません。ストーリーが進むにつれて、実は単なるポンコツ探偵ではなかったということが判明しても、もはや後の祭り。最初の数話でしっかり視聴者をつかまなきゃいけないところを、あれではつかみ損ねてもいたしかたありません。
それから、5人の人気ミステリー作家が脚本監修としてクレジットされているのもこのドラマの目玉のひとつだったのですが、そこまで目が覚めるほどのトリックがあるわけでもなく、肩透かし感が強かった。嵐ファンもミステリーファンも、どちらも納得のできない仕上がりになってるのが、この低視聴率につながっているのでしょう」
張り巡らされた伏線がうまく回収されれば、実は大成功というオチもあり得るのではないか
とうわけで、スタートダッシュに失敗したまま失速していった感もある本作。とはいえ、全編を貫く「20年前の事件」の真相に、ファンからの注目が集まっているというが……。
「前半の一話完結スタイルはポンコツ探偵がメインでしたが、中盤からの第2章になると、“20年前の事件”が物語の中心となり、一気におもしろくなってきた。『あなたの番です』や『3年A組‐今から皆さんは、人質です‐』を生んだ、この日テレ『日曜ドラマ』枠は、しばしば“壮大な黒幕”などの現実離れした設定を描きますが、中盤以降は、このヒットした2作品と比べても遜色のないほどの仕上がりではないかと思いますね。張り巡らされた伏線をどうやって回収するのか、そして本当の黒幕は誰なのか、最終回への持っていき方が非常にうまい。最初の櫻井くんによるポンコツ探偵ぶりに辟易して脱落しなかった人だけが、このカタルシスを味わえるのでしょう。もちろん、伏線がすべてうまく回収できれば……ですが。
総監督の入江悠さんは優秀な演出家だと思いますが、もともとは映画『SR サイタマノラッパー』シリーズ(2009年〜)で世に出てきた人。最近では映画『22年目の告白‐私が殺人犯です‐』(2017年)や映画『AI崩壊』(2020年)などメジャー作品を手掛けて成功を収めていますが、とはいえこれほどまでのメジャーキャストが揃った地上波連続ドラマは、彼にとっても初の試み。スタートダッシュで視聴者をつかみ損ねたことが、かえすがえすも悔やまれますね……」(前出・テレビ誌記者)
櫻井翔、広瀬すず、橋本環奈……という豪華キャストがかえってアダになってしまったか
では、6月13日放送の最終回はいったいどうなるのか? 本ドラマを初回から視聴し続けているという、あるスポーツ紙の芸能記者はこう語る。
「一部では噂されていますが、『ネメシス』は映画化がすでに決定しており、ドラマと同タイミングですでに撮影済みともいわれているため、どんなに視聴率が悪かろうと、さすがにお蔵入りはないと思います。以前、フジテレビでは連ドラ『コンフィデンスマンJP』(主演:長澤まさみ)が映画化され、2019年の1作目が29.7億円、2020年の2作目が38.4億円と大ヒットしました。しかし実は、連ドラ版では視聴率1桁が続き、“大惨敗”だったんですよ。今は視聴率が多少低くても、動画サブスクで収益化できたり、映画化ともなればグッズ展開などでさらに“稼ぎ口”が増える。『ネメシス』もおそらく、こうしたビジネスモデルを目指しているのでしょう。なので、最終回は映画化を前提とした壮大な終わり方をするはず。だからこそ、今から見ても遅くはないのではないでしょうか。
あと、広瀬すずと橋本環奈という同世代の二大美女が共演しており、そこも見逃せないところ。最初、橋本環奈は広瀬すずの友人役として出てきたのですが、最終的には黒幕側の人間だということが判明。考えれば、今や橋本環奈もピンで主演を張れる女優さんなわけですから、“友人役”という時点でアヤしいのですが……(笑)。ポンコツ探偵役の櫻井翔もそうですが、やはりこのドラマは、キャスティングを頑張りすぎたのがかえってアダになってしまった感がありますね」
キャストが豪華すぎれば、時にはそれが足かせになることもあるということか。なんとも皮肉な話だが、少なくとも黒幕がバレてしまうようなキャスティングは避けたほうが賢明だったかもしれない。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>
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