ねんどよしりん 作品

「ポケモンが現実世界にいたら……」。そんな夢を叶えてくれそうな、実寸大のポケモンを粘土で作るYouTuber『ねんどよしりん』。

粘土とは思えないポケモンの仕上がりが大きな反響を呼び、いま国内外のポケモンファンやメディアから注目を集めるYouTuberのひとりになっている。

今回のインタビューでは、よしりんさんが憧れのMEGWINさんと対談。YouTubeを始めるきっかけとなった大きな出来事や実寸大のポケモン造形についてお話をおうかがいした。

実寸大ポケモン誕生のきっかけは婚約破棄!? 実寸大になったわけは……

よしりんさんが作ったナエルト(左)、チコリータ(中央奥)、キモリ
よしりんさんが作ったナエルト(左)、チコリータ(中央奥)、キモリ

MEGWIN:造形をはじめたきっかけを教えてください。

よしりん:粘土造形自体は大学生ぐらいから、お遊び程度で『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターとかを作っていました。本格的に始めたのは社会人になってから。ホームセンターに就職して、転勤で地元から離れていたのでなかなか知り合いもおらず、転勤が多くて同僚もすぐどこかに異動になっちゃうので、結構ヒマやったんです。ホームセンターって道具とかいろいろ借りられるので、休みの日にホームセンターに行って、裏にある広いスペースで作品を作ったのが最初です。

MEGWIN:究極の日曜大工じゃないですか。なんで数あるアニメの中からポケモンにしたんですか?

よしりん:世界的にも老若男女問わず1番人気のアニメってやっぱりポケモンかなって。あとは、ポケモンって動物とかもそうですけど、身近なものがインスピレーションされてキャラクターになっているので、作っていて楽しいっていうのが理由ですね。

MEGWIN:そこはビジネスライクなんだ。でも粘土と相性良かったですよね。YouTubeをはじめたきっかけって?

よしりん:YouTubeはアイシングクッキーYouTuberのホイップシュガーさんがきっかけで始めたんです。ホイップシュガーさんがずーっと「YouTubeやった方がいい」って言ってきていたんですけど、撮影とか編集とかしたことないし、趣味で作っていたんで断り続けていたんですけど、まぁ……。

MEGWIN:押されました?

よしりん:そうですね(笑)。でも本当の理由もありまして。

MEGWIN:そっち気になるー。

よしりん:結婚する予定で、結婚式の日程とかも決まっていたんですけど、お相手の意向で婚約破棄になったんです。彼女はいい人だったんですけど、でも悔しいじゃないですか。相手がフッたことを後悔するような仕返しをしてやろうって思ったんですよ。

     結婚したら粘土作品も小さなフィギュアにシフトして、お遊びくらいにやろうと思っていたんですが、こうなったら本格的にやったろうと思って、ホイップシュガーさんに手伝ってもらい、YouTubeをやりだしたのが本当のきっかけです(笑)。

MEGWIN:かいつまむと、彼女にフラれてむしゃくしゃしたからYouTubeやったろうと(笑)。

よしりん:ぶっちゃけると(笑)。すごい人らとコラボして、写真でも送ったろうかなぐらいの気持ちでやっていたんですけど、いまとなっては大きいコラボもいただけるようになったので、むしろ感謝ですね。

MEGWIN:僕も婚約破棄されたんですよ。「YouTuberってなんなんですかね」って。「下ネタ辞めてくださる?」って言われて、「やってませんよ」って向こうのお母さんとバチバチやって(笑)。でも、YouTubeとは運命的な出会いですね。

よしりん:造形自体はやらないっていう流れだったんで、そうですね。

MEGWIN:壮大なきっかけがあったんですね。

よしりん:普通に生きていたら、なかなかこんなの作らないですよ(笑)。

MEGWIN:幸せだったら小さいフィギュアだったんだもんね。「クソー」ってなったから等身大フィギュアになったっていう。

よしりん:いまは楽しくてしょうがないですけどね!

MEGWIN:実寸大にこだわった理由ってあるんですか?

よしりん:人と違ったことをしたいっていう。小っちゃなポケモンフィギュア作っている人はたくさんいるんですけど、実寸大のフィギュアを作っている人はいないし、かつ機能が付いていたら「現実にポケモンがいるみたい」っていう唯一無二感が出るというのが理由ですね。

     あと、以前Twitterのキャンペーンでイーブイが直接しっぽを届けてくれるっていうのがあって、これに当たったんです。その権利は姉の子どもにあげたんですけど、そのときの株ポケのお姉さんが素敵だったんですよ。テントに帰って行ったイーブイがモンスターボールに戻っていったみたいで、そのモンスターボールをお姉さんが僕らから見えなくなるまで歩いて持って帰って。こういうのに全力になれる大人ってかっこいいなって思ったのもひとつの理由ですね。

はじめしゃちょーも思わず反応!? 実寸大ポケモンの制作裏話

大バズリし、はじめしゃちょーの手に渡ったピチュー
大バズリし、現在ははじめしゃちょーが所有するピチュー

MEGWIN:製作費ってどれくらいかかっているんですか?

よしりん:キャラクターによって違いますが、1万~2万円。ものによってはもっと高かったり、安かったりします。ワイヤレス充電できるビビリダマは7,000円くらいですね。

MEGWIN:制作時間は粘土を乾かす時間があると思いますけど、どれくらいかかっています?

よしりん:だいたい1カ月くらいでできるんですけど、7割くらいは乾燥させている時間なんです。実際に粘土で形を作ったり、やすりがけをしたり、スプレーしたりっていう時間だけでいったら1週間かかってないんじゃないかなって。

MEGWIN:粘土ってどういうの使っているんですか?

よしりん:粘土は2種類使っています。ある程度丈夫で軽い100円の紙粘土を中に使って、外側には400円~500円する石粉粘土を使っています。これを5、6袋ぐらい使ったりっていう感じです。昔は高い粘土を使っていたんですけど、乾きにくくて時間がかかるので変えました。道具は100万円くらいかかっていますね。

MEGWIN:試しては捨てみたいな?

よしりん:独学なので、本当に試しては捨ての繰り返しですね。塗装ブースが1個2万円するんですが、もう3台目です。エアブラシとかスパチュラとか、使っているのはほんまにほんのちょっとなんですが、買いまくっていますね。使わなくなるやつもありますけど。

MEGWIN:今までで1番印象に残っている作品ってどれですか?

よしりん:やっぱりワイヤレス充電ができるピチューですかね。ピチューがめちゃくちゃバズって、海外からもコメントがたくさんきて、翻訳しながら「Thank you」って返しました(笑)。Twitterで「はじめしゃちょー」と繋がれたっていう意味でも、ピチューが1番っていうのもありますけど。

MEGWIN:カメラと編集ソフトって何使っているんですか?

よしりん:カメラはOsmo Pocketっていう小さいカメラを使っています。あれで机の上を写しているんですけど、360度回転するので合わせやすいんです。iPhoneしか持っていないので、SDカードを使わなくていいっていうところも便利で。ほかにはOsmo ActionとSONYのα7Cっていう、ホイップシュガーさんから勧められたものも使っています。

      編集はiMovie使って、iMacでやっています。実は40万円ぐらいするiMacをまだ収益化されていないころに買ったんです、「収益化させてやる」って(笑)。でも結局使っているのはiMovieだけっていう。

MEGWIN:動画の内容によっては、それでいいよね。

よしりん:字幕もないですし、海外向けっていうこともあって動画の切り貼りだけで作っているので。一応いろいろ使ってみたんですけど、結局iMovieですね。

MEGWIN:1本あたりの編集時間ってどれくらいですか?

よしりん:多分時間でいったら1日もかかってないと思います。撮影自体が「このシーン使うだろうな」っていうシーンを数十秒撮ってっていうのを繰り返してやっているので、編集自体はめちゃくちゃラクなんですよ。順撮りで並べて、PCに取り込むんですが、だいたい2秒~4秒くらいのカットしかつかわないので。

MEGWIN:参考にしているクリエイターとかいますか?ホイップシュガーさんとか参考にしていると思うんですけど。

よしりん:これを言ったら怒られるかもしれないですけど、ホイップシュガーさんはあんまり参考にはしていないんですよ、正直(笑)。真似できないレベルっていうのもありますけど、うまい人の動画ばかり見てもしょうがないなという思いもあったんで。

     それこそ『ONE PIECE』の造形をしている「ええやん」さんや、登録者1万人前後の方の造形動画ばっかり見ていましたね。一気に登録者数1万人くらいにいく方って、力があるからいっているんだろうなって思うんです。昔からYouTubeをやっている方の登録者が多いのは長く活動しているからなので、新進気鋭というか、そういう人らを見ていましたね。

MEGWIN:目の付け所が違う!

よしりん:最近は見てないですけど(笑)。結局シンプルなのが1番やなって思ったんで、余計な編集を入れないようにしています。

MEGWIN:徐々に自己流になってきたってことですね。動画の最後に入っているポケモンと遊んだり、バトルするおまけ動画の内容ってどのように考えていますか?

よしりん:充電できるピチューとか、日常生活で実際に使える様子を紹介する動画をはさみながらおまけ動画も作っているんですけど、造形系のYouTuberでこういったおまけ動画をやっている人っていないんです。これも差別化するためにやっていますね。

MEGWIN:このおまけ動画ってどうしてやろうと思ったんですか?

よしりん:「ポケモン全員でDJしてみよう」と思いついたんです。スピーカーがあって、オーロラビームやミストとかをポケモンが出していたら面白いなって思ったのが1番最初。ナゾノクサでは実際にポケモンゲットしてみたり、やっているうちに自分が楽しくなったんです。楽しくないとやっていられないので(笑)。

MEGWIN:ある意味YouTubeってルーティーンワークだからね。それを楽しめないと続けられないよね。

よしりん:あんまり再生回数伸びなくて、けっこう嫌なときもありましたよ。ポケモンの人気で再生回数が変わるので、「ほかのキャラクターの方が苦労しているのにな」とか思いながらやっていたこともありましたね。

MEGWIN:それはもう仕方がないよね。わかるんだけどね。

よしりん:あんまり陽の当たらないポケモンを作りたいっていうのもあるんですけど、自分がやりたいこととの兼ね合いですよね。でも結局みんな登場するんで、自分が楽しければいいかなと思います。

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