トランスジェンダーであることを公表し、30歳男性のリアルを届けるYouTubeチャンネル「かなたいむ。」の奏太さん。
「かなたいむ。」チャンネルは、LGBTQ当事者やその周りの方々に寄りそう動画が多く投稿されている、登録者数23万人を突破する要注目のチャンネルだ。
両親ともに耳が聞こえないという家庭で生まれ育ったというバックグラウンドも持つ奏太さんに、MEGWINさんがLGBTQの公表についてやLGBTQを取り巻く日本の現状、動画制作について話をうかがった。
トランスジェンダー公表で「自分らしく生きられるようになりました」
MEGWIN:YouTubeのぞいてみたんですけど、いろんな種類の動画を撮っているんですね。ぱっと見、トランスジェンダーかわからない。
奏太:「元女子」ということでトランスジェンダーであることは公表しているんですが、動画ではそこを強く押し出しているわけではないっていう感じですね。自分の特徴のひとつとして話していて、自然な形でLGBTQについて伝えていければいいな、と思っています。
MEGWIN:トランスジェンダーを公表することに、戸惑いとか躊躇ってありましたか?
奏太:いまでも誰かにカミングアウトするときは戸惑いというか、やっぱり緊張しますよ。
MEGWIN:僕も「トランスジェンダーだ」って言われたことで「ふーん」としか思わないんだけど、視聴者さんのなかで過剰に反応するひとっているんですか?
奏太:いまはトランスジェンダー自体、「そういう人いるよね」と知られてきているので、「そうなの!?」みたいな人はあまりいない世の中になってきましたね。今はその少し先だと思います。トランスジェンダーってどういう人なのかというのが、まだ知ってもらえていない段階かなと思っています。
もともと、身体が女性だっていうのがコンプレックスではあって、それを人にさらけ出すっていうのは、はじめはかなり抵抗があったんですけど。いまはそれよりも応援してくださる声の方が増えて、それに救われることが多くて。
MEGWIN:僕、「LGBTQ」ってどの頭文字をさしているのかよくわからないんですけど、一括りにされるとさらにわからないみたいな。一括りにしない方がいいと思っちゃうんですが、どう思いますか?
奏太:性別変更をするために手術をするという選択肢があるのは、現在の日本ではトランスジェンダーだけだったりもしますし、僕もゲイの方だったり、バイセクシャルの方だったりの気持ちを理解できていないところも多いと思います。ただLGBTQ関係なく、人それぞれ違った考え方や価値観があるとは思いますね。
MEGWIN:YouTubeで公表して良かったことってありますか?
奏太:僕の動画をきっかけに、若い世代のLGBTQの当事者の子たちが「カミングアウトできました」など、報告してくれるのが嬉しいです。僕自身も元女子だと発信することで、自分にも、周りにも嘘をつかずにいられるので、自分らしく生きられるようになりました。
MEGWIN:言うとラクになるんですね。
奏太:言うまでしんどいですけど、言ったらラクにはなりましたね。なので、僕自身は公表して良かったなっていうふうには思いますね。
MEGWIN:日本はLGBTQへの対応がだいぶ遅れているっていうけど、どうなんでしょう。
奏太:先進国のなかではかなり遅れていると思いますが、10年前、20年前に比べると進んではいるんですよ。変化がないわけではないので、そこは良かったとは思うんですけど、同性婚とかに関する問題はかなり遅いので、そこは早急に実現してほしいところです。
MEGWIN:うちの嫁がドイツ人なんですけど、ドイツではそんなの全然気にしないっていうからなー。
奏太:日本ではいまでも「LGBTQの結婚を認めると少子化になる」みたいな話をされる方もいますが、同性婚を認めた方が子どもを持ちたいカップルも、パートナーと安心して子育てができると思うので、少子化の問題も良い方向に進むのではないかと個人的には思っています。
トランスジェンダーも、現在の日本では性別を変えるために手術することが必須ですが、手術自体も本当に必要があるのか、そのあたりも課題なのかなと思います。
MEGWIN:手術って保険とかきくんですか?
奏太:最近適用されるようになりました。
MEGWIN:本当にちょっとずつ進んでいるんですね。
奏太:でも日本だと手術が受けられる病院が少ないので、僕が手術を受けた当時は受けるまで何年待ちとかだったんです。なので僕の場合は、日本よりも早く手術が受けられるタイで手術をすることにしました。
MEGWIN:でも自費診療になっちゃいますよね?
奏太:タイは物価が安いので、医療費も安いんです。手術の件数も多いので、技術もいいみたいです。
MEGWIN:何年待ちはちょっとね。日本も早く進むといいですね。ホルモン注射の値段っていくらくらいするんですか?
奏太:自費診療で、値段も変動がありますが、2週間から4週間おきに打つものは約2~3,000円。僕が打っているのは半年に1回打つもので、約3万円くらいです。
MEGWIN:ホルモン注射を打つと、骨格とかは変わるの?
奏太:変わっていないですね。もともとスポーツをやっていたので、ガタイはいい方で。でも女性はおへその上からくびれるんですけど、男性はおへその下からくびれるので、そういったところは筋トレでカバーしています。パーソナルトレーニングに週3で通っているんですけど、トレーナーさんにはカミングアウトして、トレーニングしてもらっています。
MEGWIN:肌が荒れるとか、そういうのは?
奏太:すごい荒れました。男性ホルモンが増えるので、脂がすごくて。普段のお手入れじゃどうにもならなかったですね。
カミングアウトに「正解はない」 奏太が経験から思うこととは?
MEGWIN:カミングアウトするか悩んでいる人に向けて、アドバイスってありますか?誰に相談したらいいとか。
奏太:カミングアウトする相手はかなり慎重になるというか、「この人に話そうかな」っていうのは、人を選ぶと思うんです。いまになって思うのは、僕はカミングアウトした先にこの人と描いていきたい未来があるっていう人、この先も一緒にいたい人にカミングアウトしていたなと思います。
MEGWIN:そうなんだね。
奏太:「偽りなく本音で話したい」っていう相手に伝えたらいいんじゃないかなって思いますね。あとは日常生活の言葉の端々で、「この人、否定的じゃないな」っていうのを汲みとったり、そのあたりからアンテナをはっておくと、カミングアウトできそうだな〜とかはありますね。
MEGWIN:奏太さんは何歳ぐらいから悩んでいたんですか?
奏太:僕の場合、「人と違うな」って気づいたのは中学校のころですね。高校生の頃に上戸彩さんが出ていた『金八先生』(TBS系)と、上野樹里さんが出演していたドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)を見て、性同一性障害って言葉を知って、「あ、自分これだ!」ってわかったんです。それまでも違和感はあったんですけど、この違和感の正体がなんなのかがわからなかったんですよね。
MEGWIN:そういうのあるよね。俺もオーストラリア人の元嫁に読み書きの障害の「ディスレクシアじゃないか」って言われて。でもそういう専門家が日本に1人しかいなくて、オーストラリアではメジャーだけど、日本では全然知られていないっていう。それで病院に行ってみたらめちゃめちゃ症状が合致するんですよ。
僕の日常は変わらないですけど、もっと早く知っていればもっといい勉強の仕方があったんじゃないかなって思うと、やっぱり情報の流通って大事だなって。
奏太:名前がつくことで、少し安心感がありますよね、「自分だけじゃないんだな~」って。そういう意味ではLGBTQもそうですけど、トランスジェンダーってつくことで、安心感はあるのかなって思いますね。
MEGWIN:僕の場合はただ勉強ができないんじゃないのって思われがちな病気だけど、名前がわかって調べられるのはいいよね。でもカミングアウトはなー、難しいですよね。
奏太:「これが正解!」というのはないのかなと。カミングアウトしないのも、それはそれで正解だし。でもしたいという気持ちがあるならしてみてもいいんじゃないかな。「今だけの一時的な悩みでしょ」みたいに言われてしまうとすごく辛かったりしますが、自分の気持ちを話すことは、自分に正直でいる一歩なのかなとも思います。
MEGWIN:僕なんかちょっと苦行があった方が面白いって感じちゃう(笑)。自分が障害だっていわれたときも、「面白いな」って思いました。病気と違うし、治らないなら「もう、どうでもいい」って思っちゃう。まだまだ日本はLGBTQの理解に乏しいって言われていますけど、どんな国になってほしいとかありますか?
奏太:今の日本は同性と結婚ができないじゃないですか。皆さんが日本に生まれて、当たり前に持っている結婚の権利を奪われるっていうのは、違うよなと思います。みんなが平等に生きられる日本であってほしいですね。
MEGWIN:「国が認めてくれたんだ」っていうだけで、みんながスーっと受け入れてくれそうですもんね。
奏太:もちろんパートナーと一緒に生きていく選択肢は結婚だけではないですし、いろんな形があっていいと思っています。ですが、その選択肢すらない人がいる現状は課題だと思いますね。
MEGWIN:若干結婚のハードルも低くなっているような気もするよね。離婚率がめっちゃ高くなっているから。
奏太:同性婚ができることになれば、結婚率は上がると思うんですけどね。
MEGWIN:意識が追い付くかどうかですよね。ほかの国は結婚できるところ多いんですよね?
奏太:できる国が増えてきていますよね。
MEGWIN:早く結婚が認められるようになるといいですよね。そこが変わって「嫌だ」っていう人いないでしょ。
奏太:いないと思いたいですね。同性婚の問題を身近なこととして捉えている人が増えて、誰もが賛成してくれる世の中になってくれることを願います。
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